紐(ひも)
人類の歴史の初期は、蔓(つる)や蔦(つた)などの自然素材の利用から始まりました。
長い物や小さな「どんぐり」を運ぶためには、物を集合体にしてまとめる方が効率的です。そのため、生活周辺にある蔓や枝などを利用して、物をまとめたり運んだりしたと考えられます。長い物は束ね、丸い物は皮や蔓を編んで籠にしました。なお、「束」という漢字の語源は、木を輪で「くくる」ことに由来しています。
その後、東南アジアでは米作が広まり、「稲わら」が広く使われるようになりました。「稲わら」とは、稲を叩いて繊維を砕き、柔軟にした後、2~3本を撚(よ)り合わせたものです。耐久力や強度が求められるものには、植物繊維の中でも長く強靭なものが使用されました。
日本ではシュロ、コウゾ、くず、麻、水引など
日本では、和歌山海南地方が産地で、たわしの産地として発展し、現在は日用家庭品の製造地となっている「シュロ」。また、灰のアルカリ処理技術が発展し、紙の原料となった「コウゾ」。
さらに、昭和30年ごろまでは山地で薪の束用として重宝されていた「くず」は、現在では厄介な雑草の代名詞となっています。しかし、「くず」の根からは、漢方薬の風邪薬として知られる葛根湯(かっこんとう)が作られ、葛の根のでんぷんを利用して、葛餅が作られています。
次に「麻」。麻は中国から伝わり、金封の水引の元祖として使われていました。大和時代の「あわびのし」や「昆布のし」を巻く紐は麻で作られていたのです。
その後、麻は江戸時代に紙製の「水引」に変わりました。紙を撚ってひも状にし、何本かを横に広げて繋げたものが「水引」です。数本の紙紐を作る際には水糊で接合されるため、この作業が「水引作業」と呼ばれるようになり、冠婚葬祭で使われるようになったのです。
大正時代に入ると、機械工業化が進み、長尺物の加工が可能になり、百貨店の普及とともに、「お使い物」などの商品は包装紙で包まれ、紐がかけられるようになりました。その後、紙製の水引は厚みがあるため、綿糸製の水引が主流となり、さらにプラスチックの発展により、デザイン性に優れ、薄く、硬く、水にも強く、カラフルなプラスチック製の水引が主流となり、現在に至ります。
帯鉄
高度成長期には、流通に大変革が起こりました。大きな荷物は国鉄荷物から民間の自動車宅配便に、木箱からダンボールに、さらに短時間で大量に運ばれるようになりました。
その変化に対応するため、紐(ひも)も進化が求められました。薄く、強靭で、機械で結束できる紐が必要となり、そこで登場したのがPPバンドと帯鉄です。
帯鉄は鉄筋や木箱の結束に使われていましたが、平成5年頃から、帯鉄に匹敵する強度を持つPET樹脂製のバンドが登場しました。
PPバンドの原料はポリプロピレン(PP)で、名前は「ポリ」と「プロピレン」の「P」からきています。PP樹脂は合成樹脂の中で最も多く生産されており、その理由としては、
- 加工がしやすい
- 安価である
- 物性が安定している
- 安全である
などが挙げられます。これからも、PPバンドに代わる素材は当分出てこないと考えられます。
PPバンドの処理
長いものは処理が厄介です。切れない、縛れない、嵩高いという問題があります。
そのため、業界では安価なPPバンド切断機が静かに普及しています。この機械は、送りローラー装置を使用して、自動的に1〜2cmの長さに高速で切断します。
切断後、体積は1/500に減容され、プラスチックのリサイクルにも処理がしやすくなります。このため、廃棄されたPPバンドを取り扱う企業やリサイクル処理業者にとって、切断機は必要不可欠な設備となっています。